「夢を与える」綿矢りさ
あらすじ
幼い頃からチャイルドモデルとして美しく、健やかな少女・夕子の栄光と墜落の果てを描いた作品。
感想
駆け足でストーリーが過ぎていきます。
ある日、高校のクラスメイトである和哉(夕子曰くインドア派の不良)を誘い、授業をサボって、きれいな川を見に行く。
教師をクビにすることを企んでいた和哉に「家と学校を行き来する毎日でストレスがたまってるから、小さなことが気になるんだよ。こうやってときどき好きなとこに出かければいい」と諭しつつ、夕子はいつの間にか失くしてしまった何かが帰ってくるのを待ちます。
私も小さなことで悩んでしまうことがあります。きっと一日中、家にいるからですね。たまには近所をのんびり散歩してみようと思います。
深夜番組で観た無名のダンサー正晃に「まだやれるからって、やる必要ないだろ。まだやれるけど、やらない。それでいいんじゃない。ーーーギリギリの限界までやる必要なんてないだろ。できたって、やらなくてもいい」と「がんばれ!」「あともうちょっと」と言う周りの人とは違う言葉に夕子は心が染みます。
確かに物事を「頑張らなくちゃ、頑張らなくちゃ」と自分に言い聞かせ、頑張り過ぎてしまうことがあります。他人に対しても「頑張れ!」と言い、頑張ることを美化しているのは私だけではないはずです。でも、もう一分張りして頑張り続ける夕子は日本中誰もが知っている人気者、頑張れるけどやらない正晃は世間には知られていないという差があるのも事実です。
幼い頃から「将来をテレビを見ている人に夢を与えるような女優になりたいです」とインタビューに応えることが習慣になっている夕子。
“夢を与える”という言葉が汚らしく感じる、“与える”なんて高飛車な言い方は決定的におかしいし、“夢”って一体どういうものなのかわからない。
その答えが見つからないまま、墜落の道を突き進んでいきます。
お気に入り度
★★★☆☆ 星2つ
芸能界に興味がある人は一読を。
著者その他の作品
「インストール」
★★★★☆ 星4つ
「蹴りたい背中」
★★★☆☆ 星3つ
「勝手にふるえてろ」
★★☆☆☆ 星2つ
「かわいそうだね?」
★★☆☆☆ 星2つ
「亜美ちゃんは美人」
★★★★☆ 星4つ
「しょうがの味は熱い」
未読
「憤死」
未読
「大地のゲーム」
未読