発売日には毎回長蛇の列!グレートギャツビーのオマージュ?!村上春樹の7年ぶりの書き下ろし長編小説「騎士団長殺し」村上春樹

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

 
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

 

内容紹介

その年の五月から翌年の初めにかけて、私は狭い谷間の入り口近くの、山の上に住んでいた。夏には谷の奥の方でひっきりなしに雨が降っていたが、谷の外側はだいたい晴れていた…。それは孤独で静謐な日々であるはずだった。騎士団長が顕れるまでは。

目次

第1部 顕れるイデア

プロローグ

もし表面が曇っているようであれば

みんな月に行ってしまうかもしれない

ただの物理的な反射に過ぎない

遠くから見ればおおかたのものごとは美しく見える

息もこときれ、手足も冷たい

今のところは顔のない依頼人です

良くも悪くも覚えやすい名前

かたちを変えた祝福

お互いのかけらを交換し合う

僕らは高く繋がった緑の草をかき分けて

月光がそこにあるすべてをきれいに照らしていた

あの名もなき郵便配達夫のように

それは今のところただの仮説に過ぎません

しかしここまで奇妙な出来事は初めてだ

これはただの始まりに過ぎない

比較的良い一日

どうしてそんな大事なことを見逃していたのか

好奇心が殺すのは猫だけじゃない

私の後ろに何か見える?

存在と非存在が混じり合っていく瞬間

小さくはあるが、切ればちゃんと血が出る

招待はまだちゃんと生きています

みんなはほんとうにこの世界にいるんだよ

純粋な第一次情報を収集しているだけ

真実がどれほど深い孤独を人にもたらすものか

これ以上の構図はありえない

姿かたちはありありと覚えていながら

フランツ・カフカは坂道を愛していた

そこに含まれているかもしれない不自然な要素

そういうのにはたぶんかなりの個人差がある

あるいはそれは完璧すぎたのかもしれない

彼の専門的技能は多いに重宝された

第2部 還ろうメタファー編

目に見えないものと同じくらい、目に見えるものが好きだ

そういえば最近、空気圧を測ったことがなかった

あの場所はそのままにしておく方がよかった

試合のルールについてぜんぜん語り合わないこと

どんなものごとにも明るい側面がある

あれではとてもイルカにはなれない

特定の目的を持って作られた、偽装された容れ物

その顔に見違えようはなかった

私が振り返らないときにだけ

床に落として割れたら、それは卵だ

それがただの夢として終わってしまうわけない

人がその人であることの特徴みたいなもの

何かが起ころうとしている

高い強固な壁は人を無力にします

今日は金曜日だったかな?

スペイン人たちはアイルランドの沖合を航海する方法を知らず

それと同じ数だけの死が満ちている

それは犠牲と試練を要求する

今が時だ

オレンジ色のとんがり帽をかぶった男

火掻き棒だったかもしれない

永遠というのはとても長い時間だ

それは明らかに原理に反したことだ

埋めなくてはならない空白がいくつかありそうです

私がいつかやらなくてはならないこと

火星の美しい運河の話を聞いているみたいだ

死が二人を分かつまでは

もしその人物がかなり長い手を持っていれば

勇気のある賢い女の子にならなくてはならない

それは深い迷路のような趣を帯びてくる

でもそれはあなたが考えているようなことじゃない

恩寵のひとつのかたちとして

 

感想

楽しみにしていた本をようやく読み終えることが出来ました。発売した2月はツワリが酷く、とてもじゃないですが本を読める状況ではありませんでした。期待が膨らみ過ぎていたのでしょうか、正直少し残念だったというのが小説全体の感想です。

村上春樹の小説は全部読んでいるので(たぶん)、世界観だとか登場人物のクセだとか決まり事みたいなのはわかっているし、寧ろその独特な部分が好きでした。でも、それが今回に限ってなぜか、過去作品の使い回しのように感じてしまいました。大幅なアップデートはなく、不具合の修正をしただけというような感じ、残念ながら私には新しい要素が発見出来ませんでした。そして、毎回読むとどっぷり小説の中に入り込む私は主人公や少女の真似をしたくなる、例えばコーヒーが飲みたくなったりするのですが、それも不思議となかったのです。

村上春樹の小説でどれが一番好きかと聞かれると困るのですが、「騎士団長殺し」が一番ではないことは私のことでは確かなことです。また読み返すと変わるかもしれませんが。今のところ。それじゃあ、読まなくてもいいかと聞かれると答えは“NO!”で、読んだ方がいいよ、となると思います。

オススメ度 星2つ ★★

過去長編小説を集約した小説

印象に残った文章

「あなたはいかがですか? 退屈したことはありますか?」と彼は私に尋ねた。

「もちろんあります。しょっちゅうしています。でも退屈さは、今ではぼくの人生の欠くことのできない一部になっているみたいです」

「退屈であることが苦痛にはならないというこですか?」

「どうやら退屈さに慣れてしまったようです。苦痛に感じることはありません」

 

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