2019年に読んだ126冊の中から、特に印象に残った本10冊を紹介したいと思います。
小説
現職警察官・梶聡一郎が、アルツハイマーを患う妻を殺害し、自首してきた。
動機も経過も素直に明かす梶だが、殺害から自首までの2日間の行動だけは頑として語ろうとしない。
寺尾聰主演で映画化もされた横山秀夫の代表作。
新年そうそう実家で読み耽った。
警察ものに馴染みがないため、登場人物の肩書き、組織図は頭がこんがらがる。
それでも読むスピードを落とすことが出来ず、一息付かずに読み終わった。
警察、検事、弁護士、新聞記者それぞれの視点から真相を解き明かしていく過程が非常に読み応えがあった。
〝半落ち〟とは警察用語で「一部自供した」ということ。
なぜ、梶は〝完落ち〟しないのか。
一読の価値あり。
ノンフィクション
『安楽死を遂げた日本人』 宮下洋一
理想の死を求めてスイスに渡った日本人に密着した、圧巻のルポルタージュ。
私は観ていませんが、NHKスペシャルで大反響だったという。
最近では、厚生労働省が発表した「人生会議」のPRポスターが物議を醸した。
命の話は扱いづらい。
デリケートな問題にも関わらず、最期まで取材を受けた小島ミナさんに感謝したい。
そして、それを発表した宮下洋一さんにも。
本書のおかげで私は、これまで向き合っていなかった自分自身の死生観を問うことが出来た。
今年は「人生100年時代」も話題になり、人生の終盤について考えさせられた1年だった。
太陽の昇らない冬の北極を一匹の犬とともに旅する『極夜行』の本番前に要した3年間の準備の旅。
期待通り、最高だった。
大冒険前の準備ですら、既に冒険。
現地でも使用可能な六分儀探しに始まり、食料調達やソリ作り等の入念な準備に感服。
相棒犬ウヤミリックとのやり取りには笑わずにはいられない。
読んだ人はもれなく水族館でセイウチを見ると恐怖にかられる。
『極夜行』もオススメ。
私は角幡唯介さんの言葉選びのセンスも好み。
『ゲッベルスと私ーーナチ宣伝相秘書の独白』 ブルンヒルデ・ポムゼル/トーレ・D・ハイゼン
ヒトラーの右腕としてナチ体制を牽引したヨーゼフ・ゲッベルスの103歳の元秘書が、69年の沈黙を破り当時を回想する。
「私は何も知らなかった」この言葉がとても印象的な本。
まるで政治家の「記憶にございません」のよう。
解説まで読むと、改めて他人事では終わらない怖さがある。
自分の興味があることしか知らない、知ろうとしない。
自分の望む〝正解〟のみを手軽に集められるネット社会の現代では、よりその傾向が強くなっている気がする。
ポムゼルが異質だったのではない。
私がポムゼルと同じ立場だったら、ナチ党には入らなかったと言い切れる?
今の私にはたわいも無いと思える選択が未来に繋がっている。
自国主義が進む今だからこそ読めてよかったと思う。
『4歳の僕はこうしてアウシュヴィッツから生還した』 マイケル・ボーンスタイン/ボーンスタイン・ホリンスタート
1940年にドイツ占領下のポーランドに生まれたマイケルは、ゲットーや収容所暮らしを余儀なくされたのち、わずか4歳でアウシュヴィッツに送られた。
なぜ、子どもが次々に殺されていった収容所で、彼は6か月も生き延びられたのか。
戦争が終わったからといって、生活が元通りになるわけではない。
終戦後、家族と再会した後も生活の困難な状況に心が痛んだ。
実用書
『ファクトフルネス』 ハンス・ロスリング/オーラ・ロスリング/アンナ・ロスリング・ロンランド
ファクトフルネスとは――データや事実にもとづき、世界を読み解く習慣。
教育、貧困、環境、エネルギー、医療、人口問題などをテーマに、世界の正しい見方をわかりやすく紹介。
今年、話題になった本。
まずは本書に掲載されているクイズを解いてみてほしい。
自分がいかに世界を悪い方に思い込んでいるかがわかる。
世界を正しく読み解けるようになれば、事実が見えてくる。
ルールを身に付ければ、日常生活にも活かせる。
『仕事と家庭両立できない?!「女性が輝く社会」のウソとホント』 アン=マリー・スローター
働く女性が増え、共働き世帯が主流となった今も、育児・介護など家庭での役割を担い、 仕事との両立に悩んでいるのは圧倒的に女性。
その一方で、もっと家庭の役割に貢献したくても、それができない男性も少なくない。
仕事と家庭の両立に悩んでいるのは、母親だけじゃない。
父親だって悩んでいる。
言われるとものすごく当たり前だけど、家庭でも社会でも母親ばかりクローズアップされているような気がする。
それこそ男性差別。
そういうことにも気が付かされたり一冊。
『こんなにちがう!世界の子育て』 メイリン・ホプグッド
育児の正解はひとつじゃなかった!
育児の「思い込み」をくつがえす、いろんな国の驚きの子育て。
アルゼンチンでは、寝ない子なら一緒に夜更かしをする。
2歳児にも親と同じ食べ物を食べるフランス。
国によって、地域によって育児の正解はバラバラ。
それこそ家庭ごとに正解が違ってもおかしくない。
育児の正解に翻弄され、披露していた私には眼から鱗。
肩の荷がおり、育児が楽になった。
児童書
決して馴らしてはいけない聖なる獣・王獣と心を通わせる術を見いだしたエリンは、やがて王国の命運を左右する戦いに巻き込まれていく。
特に前半「闘蛇編」「王獣編」の緻密な世界観には圧倒された。
世界観に入り込み過ぎて、ページを捲る手が止まらない。
後半「探求編」「完結編」は母親になったエリンが登場。
男性や少年少女が圧倒的に主人公になることが多いファンタジーで、30代の母親が主人公なのは嬉しい。
私も30代の母親だし。
これぞ大人も楽しめるファンタジー!
外伝は気になるエリンの恋人時代、恩師エサルの恋、息子ジェシの成長。
本編を読んだ後は是非読んでほしい。
その他
『へんな西洋画家』 山田五郎
偉大な西洋画家たちが描いた“へんな絵”で、 笑って学ぶアート入門。
可愛くない子ども。
どう見てもヘタクソに見える絵。
なぞの物体。
西洋画家を見て思う変な疑問の正体がやっとわかった!
山田五郎さんのコメントに何度もクスリと笑った。
これを読むと大抵の人はアンリ・ルソーが気になる画家になるのは間違いない。
私のように芸術を知らなくても充分に楽しめる。