2017年本屋大賞ノミネート!『アメトーーク 読書芸人』又吉直樹と光浦靖子のお気に入りの本「i(アイ)」西加奈子

i(アイ)

i(アイ)

 

残酷な現実に対抗する力を、この優しくて強靭な物語が与えてくれました。

――又吉直樹

読み終わった後も、ずっと感動に浸っていました。なんてすごいんだろう。この小説は、この世界に絶対に存在しなければならない。

――中村文則

 

あらすじ

 

「想うこと」で生まれる圧倒的な強さと優しさ―直木賞作家・西加奈子の渾身の「叫び」に心揺さぶられる傑作長編!

「サラバ」(直木賞受賞)から2年、全身全霊で現代に挑む衝撃作!

i(アイ)

i(アイ)

 

シリアに生まれ、アメリカ人の父と日本人の母のもとへ養子としてやってきたワイルド曽田アイ。アイの家庭は裕福で、両親は優しく、つねにアイの意思を尊重してくれる。しかしアイは物心ついたときから、恵まれた自身の環境を思うたび、また内戦、地震、テロといった悲劇にさらされる人々を思うたび、「どうして私ではなかったんだろう」と苦しくなるのだった。そんな痛みをひそかに胸に抱きつつ、成長したアイは数学の道に進み、親友のミナや恋人のユウなど、かけがいのない存在と出会っていく。しかし世界ではなお様々な悲劇が起こり続け、アイはそこで死んだ人々の数をノートに書き留め続けるのだが―。

 

感想(※ネタバレ含む)

虚数は想像上の数。実際には大きさなどが見えない数。

「この世界にアイは存在しません」数学教師の一言が忘れられない主人公のアイは自分の存在について疑問に持つ。

「電話でこう言われたの。あなたたちの人生から、私は、私たちは、とっくにいなくなっていたはずですって。」

 今ここで、自分がそう言われたように思った。アニータの窃盗を目撃し、懇願するアニータを解雇したのが、まるで自分だったかのように。

 1988年シリアで生まれ、アメリカ人の父と日本人の母の裕福な養子アイ。なぜ自分が選ばれて、残酷な出来事には選ばれないのか。世界中で起こっていることに胸を痛めている。被害に合わなかった人は祈る権利はないのか。

 でもアイは、自分を許したかったのだ。自分以外の誰か、それも、自分を愛している誰かではない、ほとんど「世界」に等しい無関係の誰かに「それ」を言ってほしかった。そうすることでやっと、それが事実になるような気がした。自分と共にあった言葉、呪いであり友であったその言葉と、今こそ決別するときだった。

「アイは存在する。」

 「この世界にアイは存在しない。」自分自身が信じられない瞬間、否定されることもある。

 

関連本

小説だと今まで視野になかった本が一気に興味のある本に変わる。

気に入った小説だと、なお更。

「Reading Lolita in Tehran」、「テヘランでロリータを読む」と題されたその本は、アメリカでベストセラーになったものだという。

  大学教員でもあった著者アーザル・ナフィーシーが1979年革命当時から対イラク戦争を経たイラン、抑圧されたイスラム世界の中で、秘密の読書会を開いた真実の記録だった。当時ナボコフの「ロリータ」を始めすべての西洋の文学は発禁処分になっていた。つまり、読書が見つかれば、それはほとんど死を意味したのだ。

テヘランでロリータを読む

テヘランでロリータを読む

 

 

 

 

 

新たな価値を求めて闇と光の交錯を鮮やかに描きあげた「ダンス・ダンス・ダンス」村上春樹

ダンス・ダンス・ダンス村上春樹

鼠三部作を読み終わり、その流れで「ダンス・ダンス・ダンス」を読んだ。何回か読んでいるはずなのに所々内容を忘れているところがあって、数年前とまた違った視点で楽しむことが出来た。私が生まれる前、80年代が舞台の話なのに全く古いと思わせないところが好きだ。

 

 

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

 

 

ダンス・ダンス・ダンス(下) (講談社文庫)

ダンス・ダンス・ダンス(下) (講談社文庫)

 

 

あらすじ

1983年3月、フリーライターとして「文化的雪かき」をする“僕”はキキに会いに札幌にある「いるかホテル」に向かった。しかし「いるかホテル」は巨大なビルディングに変貌していた。同級生が出演する映画にキキを発見した“僕”は、キキを探す冒険に出る。

 

感想

ダンス・ダンス・ダンス」はいくつかのストーリーが重なっている長編小説。僕がこちら側に戻ってくる話でもあるし、キキを探す物語でもある。その中で今回私は気が付くと“13歳の美しい少女ユキ”を中心に読んでいた。

 

自分が13歳だった頃(ユキのように美しくはなかったけれど)を思い出し、これから親になるかもしれない(今のところ予定はないけれど)という気持ちの芽生えもあるかと思う。

思春期はユキのように感が鋭くなくても、両親が有名でなくても親の存在は必要だと思う。いくら大人びた発言をしても子供は子供には違いない。

 

「いいですか、あの子に必要なのは親の愛情なんですよ。誰かが無償で心から自分を愛してくれるという確信なんです。そういうものは僕が彼女に与えることはできないんです。そういうことができるのは親だけなんです。そのことを、あなたもあなたの奥さんもきちんと認識すべきです。それが第一。第二に、あの年代の女の子にはどうしても同じ年代の同性の友人が必要です。シンパシーを感じあえていろんなことをストレートに話しあえる同性の友人、そういう相手がいるだけでずいぶん楽になる。・・・(省略)・・・」

ダンス・ダンス・ダンス(上巻)

 

“僕”はこの小説の登場人物の中では唯一“まとも”な存在のようにも思える。

 

 「あなたは彼女と友達になりたいと言う。それは良いことです。もちろん。でもいいでうか、あなたは彼女にとって友達である前にまず母親なんです」と僕は言った。

ダンス・ダンス・ダンス(下巻)

 

私がユキだった頃、どうやって問題を解決していったのだろう。解決せず時の流れに任せている問題もある。今もそうやってやっている。

 

「いやでもみんあ成長するんだよ。そして問題を抱えたまま年をとってみんないやでも死んでいくんだ。昔からそうだったし、これからもずっとそうなんだ。君だけが問題を抱えているわけじゃない」

ダンス・ダンス・ダンス(下巻)

 

 

 

 

美人ってどんな人?あの人が美人と言われるのには、理由(秘密)がある「美人なしぐさ」中井信之

 

 

 

「美人なしぐさ」 中井信之

結婚すると「〇〇さんの奥様(嫁)」として紹介されることが増える。紹介されて恥ずかしくないようにマナー本を読んだり、人真似をするようになった。外見に関してはせめて「ブス」に見えないようにと心掛けるようになった。そうするうちに見られ方で接し方、対応の仕方が歴然と違うことを実感した。言うまでもなく、良い印象だと良い反応が返ってくる。見られ方に関して、だんだん興味を持つようになった。

 

この本をひらいているあなたは、「美しさは、持って生まれた造形によって決まる」と思っているかもしれません。しかし、人の「美しさ」は決して生まれつきの造形だけに左右されるわけではないと、私は長年の実体験から言いきることができます。

実は、美しさを決定づけるのは、その人の持つ「雰囲気」です。言い換えれば、美しく見える「雰囲気」を身につければ、誰でも「美人」に見えるのです。

 

整形手術を受けてまで美人になりたいとは思わないけれど、しぐさで美人に見られるなら嬉しいと単純に思い、「表情・話し方・動作」で個性のブランディングを指導しているポージングディレクター、イメージコンサルタントの中井信之さんの「美人なしぐさ」を読んだ。

 

 

美人な「しぐさ」

美人な「しぐさ」

 

 

目次

はじめに 「しぐさ」を変えれば「美人」になれる
Introduction 「美人」に見える人の秘密

ーヒネル(H)・カサネル(K)・カタムケル(K)ー

美人に見える「HKKの法則」

Column1 「美」は定義できるのか?

Lesson01 日常でできる基本の美人な「しぐさ」

〔毎日の積み重ねでオートマチックに美しくなる〕

1)美人に見える女性は、つねに「一の腕」を使っている

ひじから手首までの美しさを生かす

2)美人は携帯電話を見るとき「古風な美しさ」を演出する

何気ない行動に、一つの行動を加える

3)バッグは中身より外見 美人はバッグが目立たない

からだをバッグを一体化させる

4)「知性」のある美人は、セクシーでミステリアス

「本」は最高の演出道具

5)リラックスするだけじゃつまらない 美人は「アンバランス」をつくる

イスの「ひじかけ」を使いこなし、「重心」で差をつける

6)美人は脚の隙間を見せない

脚をカサネル場所で違いを出す

7)美人は足先で不安定な「美しさ」を演出する

ハイスツールで足先はそろえない

8)美人は、しゃがんでも色っぽい

ヒネッて上品に靴をそろえる

9)美人はゴージャスに車を乗り降りする

どの角度から見ても美しく隙を見せない

10)美人は、服を着ると同時に気分をまとう

素材とデザインで差をつける着こなし術

Lesson02 仕事で評価される美人な「しぐさ」

〔職場はステージ〕

1)美人は仕事の能率が上がるように美しく座る

背筋がのびると、からだが軽く、スピーディーに見える

2)美人は動作んいメリハリをきかせ、差をつける

「階段動作」でものを置く、差をつける

3)美人はときどき「男前」な魅力がある

大きく「リアクション」をとり、心をつかむ

4)美人は仕事の出会いで麗しい印象を残す

いただいた名刺は、胸からはなさない

5)一瞬で信頼される美人の挨拶

「言葉」をかけてから「お辞儀」をする

6)おもてなし美人は、視線を外さない

あたたかみの伝わるお辞儀の仕方

7)できる美人は、詫びて好かれる

お詫びの気持ちを背中で表す

8)美人は両手をそろえる

自然と相手の心をつかむ「いのり」のしぐさ

9)美人は凝視せず、「いい風」を吹かせる

誤解される目線、信頼される目線①

10)美人は、海を見るように、ゆっくり見る

誤解される目線、信頼される目線②

Lesson03 恋の相手を惹きつける美人な「しぐさ」

〔「しゃべる」より「見せる」〕

1)恋愛上手な美人はデートのはじまりにチラチラ見る

「笑顔」×「角度」で心をつかむ

2)美人はしなやかな首で語る

首の傾斜は相手への「信頼」度を表す

3)美人は「似てる」と思わせる

同調で「何か気が合う」空気を生み出す

4)美人は「思わずさわる」演出をする

時と場合により髪をさわるのはマナー違反ではない

5)美人は自分の「顔」に相手の視線を誘導する

ドキッとさせる「指先」と「3つのタッチ」

6)美人は口元をキラッと見る

恥ずかしさはときめきをつくる

7)美人は、毎回、真剣に別れる

せつなさが未練をつくる

8)美人はデートで「黒い服」を着ない

黒い色はからだの動きを制限する

Lesson04 美人な「歩き方」

〔美人は全身でエレガンスを表現する〕

1)美人は頭が前に出ない

ゆるい坂道を下るように歩く

2)美人は足あとを一直線に残す

脚の運びが「見た目年齢」を決める

3)美人は腰から歩く

色気の基本は腰から歩く

4)美人は胸の位置が高く、若々しい

胸は張るのではなく、呼吸で姿勢をつくる

5)美人は元気に歩かない

腕の振り方に品が出る

6)美人は横揺れしない

品の良い歩き方と品の悪い歩き方

7)美人は遠くを見て歩く

視線の到達点で、頭の位置が決まる

Lesson05 「いいね!」が増える美人な「写真」の撮られ方

〔撮られれば撮られるほど自分を好きになる〕

Column2 「誰が言ったの?」「どんな人なの?」で価値が決まる時代

1)美人は「角度」を知っている

背が高く、若々しく、やせて見える鉄板のポーズ

2)美人は単調ではなく、「自分の持ち味」を知っている

「スターキャラクター分析」で自分のアピールポイントを知る

3)自分に合った「キメ笑顔」を知っている

迷ったら「キャラ全開笑顔」で

4)美人は「プライベート感」を出す

雰囲気は「ポーズ」と「構図」からつくる

5)美人は顔が映える服を着る

写真写りの良い服、悪い服

6)美人は、いつもちょっとだけずるい

誰かと一緒に撮られるときの動き方

おわりに

感想

実用書は目次をサラリと読むだけのことがほとんど。気になる章の部分だけ、または太字やイラストがある本であればその部分をさらりと読んでいる。初めてこの本を見かけた時も他の実用書と同じで立ち読みだけで終わった。購入に至った理由は、身に付くまで家に置き、読み返したくなったから。

Lesson01と04は日常的なことで実践しやすい。イラスト付きでわかりやすく、私はすぐに意識するようになった。02については仕事、03は恋愛系の本や雑誌、または経験上の理由から既に実施済みに人が多いにではないだろうか。05は普段SNSを頻繁に使う人から見れば当たり前の内容だし、もっと高度なテクニックを持っているようにも思う。

Column2で語られているように現代はネットの写真一つでその人がどのような人であるか全世界中の人がわかってしまう時。使いようによってはチャンスを掴め、またチャンスを逃すことにも繋がると思う。現実世界の自分、ネット世界の自分の「しぐさ」について考えるキッカケになった。 

 

 

 

恋愛、友情、就活、裏切り。第148回直木三十五賞受賞作「何者」朝井リョウ

 

 

 

「何者」朝井リョウ

 

旅行中に読むものがなくなり、退屈そうな私に渡された1冊。

自分で買うことはない本。

退屈しのぎに読んだ本にはずなのに数ヶ月経った今でも頭の中から離れない。

SNSを日常に使う人にはイタイと思う。

 

 

何者 (新潮文庫)

何者 (新潮文庫)

 

 

あらすじ

就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて・・・・・。

 

ほんとうにたいせつなことは、ツイッターにもフェイスブックにもメールにも、どこにも書かない。

ほんとうに訴えたいことは、そんなところで発信して返信をもらって、それで満足するようなこではない。

 

感想

フェイスブック、インスタの世界がその人のリアルではない。

生活のごく一部、キラキラした一部を見せているに過ぎない。

冴えない自分を向き合えない私は何度もネットで自分を偽ろうとする。

現実が充実している私の知り合いはSNSをしない。

ネットは自分の現実ではないとわかっているのだ。

何様

何様

 

朝井リョウは私と同世代作家。単純だが応援したい。

日本アカデミー賞3冠映画「桐島、部活やめるってよ」を観て、面白いと思ったきり、原作の本は読んでいなかった。

サラリーマン兼業していたこともあるからか、現代の若者がおかれた状況がとてもリアルだと思う。

「何者」のアナザーストーリー「何様」が気になっている。

 

 

 

大阪ミナミ、夜の街に棲む男女の情けなくも愛おしい生「地下の鳩」 西加奈子

 

「地下の鳩」 西加奈子

 

西加奈子さんの未読の文庫本を見つけた。

都内の電車で読んでいたのに大阪の電車内にいる気分になった。

鬱屈とした世界の中で一生懸命に生きようとする登場人物達は、僕にとってとてもまぶしい存在です。

まっすぐで、不器用で、でも品があるんです。

とても愛しく感じるんです  ――又吉直樹(ピース)

 

 

地下の鳩 (文春文庫)

地下の鳩 (文春文庫)

 

 

目次

地下の鳩

キャバレーの呼び込みをするイキり癖のある吉田は、素人臭さの残るスナックのチーママみさをに出会い、惹かれていく。

「何よ。」

「いや、何もない。」

「もう帰る?」

「おう。」

でも吉田は、みさをのことが、まだ好きだった。 

 

タイムカプセル

話術に長け、皆から慕われるオカマのミミィがなぜ客に殴りかかったのか。

「小さいときに傷ついた人って、一生傷つかなあかんのでしょうか。」

 面会に来たことりが、そう言った。その言葉で、ミミィは故郷に戻ろうと思った。

 

感想

私には遠い夜の街。

その日、その日を一生懸命生きているようにみえる不器用で真っ直ぐな登場人物たち。

私はその日、その日を一生懸命生きているとは胸を張って言えない。

真っ直ぐでもない。

だから、やっぱり私には遠い。