「円卓」西加奈子
円卓と聞くとどんな光景が浮かびますか?
私は(おそらくほとんどの人が)家族が円卓を囲んで食事をしている場面が思い浮かびます。静かに食事をしていうるのではなく、ガヤガヤと楽しそうにお喋りをしながら5人くらいの家族が大皿にのったおかずを箸でつついているイメージです。
主人公の八歳の少女こっこの視点で描かれる「円卓」はまさに円卓のイメージそのままの小説です。偏見をまだ持たないこっこだからこそ、登場する人物の人とお喋りしながら、楽しく食事をするように物語が進んでいきます。
小学生は子供だけど、たくさんのことを自分なりに考えています。子供にはわからない、知らないわけではない、自分も子供だったくせにそんな当たり前のことも忘れてしまっていたことに反省しています。
あらすじ
小学校3年生のこっこは八人家族の大家族、好きな言葉は「孤独」、学んだ言葉をジャポニカ自由帳に書き込んでいる。同じ公共住宅に住む吃音のぽっさん、こっこの憧れ香田めぐみさん、不整脈になった朴くん、難民のゴックん、学校がつまらない幹成海、鼠人間・・・様々な人々に出あい、触れ合いながらこっこは成長する。
バラメーター ※ネタバレあり
恋愛度 ★☆☆☆☆ 星1つ
結婚で重要なのはタイミングだとしみじみ感じています。
綺麗ごとでタイミングを延ばしている(逃している)のであれば、占いや「責任」で強引にタイミングを合わせるのもありかもしれません。
ジビキは夏の間、来春結婚することを恋人に約束してしまった。あーあ。金星がふたりの婚期を祝福してくれる時期であるらしい。恋人の長広舌に脳みそが地震、結局「責任」、の言葉に完全に打ち砕かれて、頭を縦に振った、震度7。
友情度 ★★★★☆ 星4つ
ぽっさんがかっこよすぎて、このシーン読んだだけでウルッとします。
友達を守りたかった、側にいたかったと思う責任感のある男の子です。
「す、すまんかったな。」
「謝らんでええ。」
でも、先に泣いたのは、ぽっさんだった。こっこをひとりにしたこと、ウサギを顔に載せたこっこ。ぽっさんの目の玉から、透明の涙が、はらはらと落ちる。
ぽっさんは早く大人になりたいと願った。初めて。
「ひ、ひとりにして、す、すまんかった。」
家族度 ★★★★☆ 星4つ
渦原家の円卓を囲んでの食事の場面が好きです。
本当に家族が会話をしているような掛け合いです。
「昔は年の離れた子供は恥かきっ子言うたもんやけどの。」
「おばあちゃん、それどういう意味?」
「年取ってから子供出来るのんが昔は恥ずかしいことやったや。」
「あー。」
「あー。」
「その顔やめなさい。」
渦原家は、五月蝿くてかなわない。
イケメン度 ★☆☆☆☆ 星1つ
かっこいい(または可愛い)人は世代を問わず、家族の話題になります。
顔がイマイチだったら、たぶんそんなに話題になりません。
「理子よ、あの精神性やかましい穴のような男とまだ。」
「嫌やわおじいちゃん、もう別れたって。」
「別れたか!」
「やったー!」
「何喜んでるんよ。」
「あの子顔だけはよかったな。」
「ほんまに顔だけやで。」
オシャレ度 ☆☆☆☆☆ 星0つ
こっこのジャポニカ帳を元に水色のベレー帽に刺繍された本物のような蟻。
蟻はオシャレなのだろうか?私のセンスからは考えられません。
グルメ度 ★★★☆☆ 星3
家族の多い私の家も基本的にもやしなどでかさ増しされた大皿料理でした。
一人一皿ずつちんまりと盛られた食卓に憧れていましたが、今ならわかります。
何人分もの皿に盛り付け、最後に洗って片付けるのは手間隙かかり、場所も取るのです。単純に8人家族は4人家族の倍になるわけですから。
すべて一皿にどかんと盛ってあるが大丈夫だ。なぜなら円卓だから。皆にゆきわたる、渦原家の円卓。
感想
こっこはわからないこと、納得いかないことを素直に「なんでじゃ」と聞きます。
もし、私がこっこに聞かれたら「なんでだろうねー」と曖昧に応えると思います。こっこの質問もきちんと向き合わないし、面倒な子だなーって思っていると思います。そんな私をこっこは見透かすでしょう、この大人何も考えていない、子供相手だから適当に応えていると・・・関西弁でしつこく聞かれたらもうお手上げです。
私が子供だった時もこっこと同じようなことを考えていたと思います。いつの間にか「イマジン」し、深く考えなくても言ってはいけないこと、真似してはいけないことを身にきました。ところが、未だにイマジンが出来ていないことによって、相手(他人)を傷つけてしまうことがあります。まだイマジン力は足りないようです。そう思うと世の中のマナー違反の大概はイメージが足りないからかもしれません。
関連作品
天才子役・芦田愛菜ちゃんがこっこです。