内容紹介
脚本家・赤羽環がオーナーの「スロウハイツ」には人気小説家のチヨダ・コーキの他クリエーターを志す友人たちが暮らしていた。ところが謎の美少女・加々美莉々亜が入居したことにより、思わぬ方向へ進み出す。
目次
第一章 「赤羽環はキレてしまった」
第二章 「狩野壮太は回想する」
第三章 「チヨダ・コーキの話をしよう」
第四章 「円屋伸一は出て行った」
第五章 「加々美莉々亜がやってくる」
第六章 「『コーキの天使』は捜索される」
第七章 「森永すみれは恋をする」
第八章 「長野正義は鋏を取り出す」
第九章 「拝島司はミスを犯す」
第十章 「赤羽桃花は姉を語る」
第十一章 「黒木智志は創作する」
第十二章 「環の家は解散する」
最終章 「二十代の千代田光輝は死にたかった」
エピローグ
オススメ度 星2つ ★★
共同生活に憧れ、夢を追う若者にオススメの本!
恋愛度 星4つ ★★★★☆
恋愛だけでは幸せとは言えないし、仕事だけでも幸せとは言えないです。
恋をすると誰の言うことも聞けなくなります。
そして、誰の声も入らなくなるほどの恋が出来たのは幸せの一つでもあると思います。
第八章 「長野正義は鋏を取り出す」
「大抵の女の子にとって、恋や男以上の幸せはないんでしょう?それはわかってる。仕事で成功しなくても、好きな男一人いればそれでいいっていう、その気持ちもわかる。どれだけ絵が認められても、彼氏がいなかったら満たされないでしょう。スーがそういうタイプだってことは嫌ってほど知ってるの。だけど」
一歩でいいから、歩いてみて欲しい。それがエゴでしかないのだと、自覚できていても尚。
「スーは多分、今誰の言うことも聞けないよ」
残念だけど、と狩野が悲しそうな顔をする。「知ってる」と環は答える
友情度 星3つ ★★★☆☆
赤羽環という人間は自分に真っ直ぐ正直です。
それは自分だけでなく、友人に対しても同じです。
円屋伸一が出て行ったのは、赤羽環が親友だったからに他ならないのです。
第四章 「円屋伸一は出て行った」
「いいこと教えてあげる、狩野。自分の言った言葉っていうのは、全部自分に返ってくる。返ってきて、未来の自分を縛る。声は、呪いになるんだよ」
家族度 星2つ ★★☆☆☆
自分が最期を迎えるといく時に、相手の気持ちよりも自分の中にある蟠りをなくしたいと思うのかもしれません。
家族であればなお更・・・。
第十一章 「黒木智志は創作する」
「環のお父さん、何だか卑怯だ。お前、会って罵らない自信あるか?」
「ない。だけど、いくあの人だって、それはわかってるんじゃない?あれだけ母親に似てるからって娘を拒絶してきた人なんだから、今現在の私の気性についてもきっと想像がついているでしょう。罵られたいんだよ、自分が捨てた女の代わりに」
だから、絶対にそうしてやらない。
イケメン度 星2つ ★★☆☆☆
容姿は世間一般的に長野正義が人気なんだろうと思います。
まるで芸能人のように顔がきれいのようですから。
少々言動が理屈っぽいところは私は苦手です。
その反対が千代田光輝です。
ガリガリの体型に伸び放題の髪の毛と無精髭はお世辞にも顔がきれいとは言われないでしょう。
でも、栄養失調で倒れてしまう程の情熱で仕事に集中する姿勢はかっこいいです。
いかにも思い描く文化人らしいです。
自分には絶対ない部分への憧れもありますし、仕事以外まともに出来ない部分は母性本能を燻る要素でもあります。
家事、生活が自分一人で完結出来てしまう人よりも、自分の存在価値がある気がしてしまうからでしょうか。
第三章 「チヨダ・コーキの話をしよう」
「特に仕事に入るとそうですね。自分の中にある脂肪の最後の一欠片まで燃焼する勢いでやってるみたいだ、ってよく怒られます。自覚、ないんですけどね。ずっとパソコンの前に座ってて、気付くと日付が何日か変わってて、立ち上がろうとした途端に力がまるで入らなくて頼れる、なんてこともよくあります」
オシャレ度 星2つ ★★☆☆☆
オシャレで自分の気持ちが左右されることもあると思います。
髪をアップにし、口紅をきちんと塗ると仕事モードに入りやすくなり、ワンピースを着ると自然と言葉遣い、動作が女性らしくなります。
オシャレは時に戦闘服になります。
赤羽環は脚本の第一線で戦っています。
第一章 「赤羽環はキレてしまった」
アップにした髪をアクセサリーのついたピンで留め、明るいピンク色のワンピースから伸びる脚は、この距離で見なければわからない程細かい目をしたベージュの網タイツだ。彼女のおしゃれは武装のようだといつも思う。誰か見えない相手に負けないようにと考案された鎧。やり過ぎの一歩手前というところまでお金がかかっている。
グルメ度 星1つ ★☆☆☆☆
「ハイツ・オブ・オズ」のチョコレートホールケーキは一個一万円と高級です。
実在するケーキ屋ではないので、実際に食べてみることが出来ないのが残念ですが、思い出のあるケーキだからこそ特別な味がするんでしょうね。
感想
漫画家の神様と呼ばれる手塚治虫を慕って、藤子・F・不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、藤子不二雄Aなどの若い漫画家が集まり暮らしていたのが木造アパートのトキワ荘というのはあまりにも有名な話です。
スロウハイツはトキワ壮のように小説家、漫画家、映画監督、画家などジャンルを超え集まったクリエイターが生活しています。藤子・F・不二雄のファンという作者本人が影響されているのがうかがえます。
例えクリエイターでなくても男女数人が共同が一緒に住むということは、何かかしらが起こります。本人たちにとっては事件、部外者からすると些細な出来事に過ぎない事柄も謎解きのように描かれています。
今まで読んだ辻村深月の小説に登場した人物が登場したことにより、「スロウハイツの神様」のストーリーだけでなく、辻村ワールドを楽しむことが出来ました。
赤羽環は「島はぼくらと」、芹沢光は「凍りのくじら」にも登場しています。きっと他の登場人物も他の作品をリンクしているのだろうけど、それはこれからの楽しみに取っておきます。
関連本
漫画も出てます。
チヨダ・コーキが書いた本