2016年「このミステリーがすごい」第1位!最後の20ページでどんでん返しの小説「王とサーカス」米澤穂信

 「満願」「折れた竜骨」の米澤穂信、渾身の書き下ろし最新傑作!

王とサーカス

王とサーカス

 

彼女は異邦でふたたび、自らの人生をも左右するような大事件に直面する。

彼女は何を見、何を聞き、何を胸に刻んだのか。

 

 

内容

 

わたしはまだ、何も知ってはいないのだ。

ひとにものを訊く意味も。

ひとにものを伝える意味も。

王とサーカス

王とサーカス

 

2001年、新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智は、知人の雑誌編集者から海外旅行特集の仕事を受け、事前取材のためネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、王宮で国王をはじめとする王族殺害事件が勃発する。太刀洗はジャーナリストとして早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり……。「この男は、わたしのために殺されたのか? あるいは――」疑問と苦悩の果てに、太刀洗が辿り着いた痛切な真実とは?

 

感想

 

 

私は小説の序盤、カトマンズの宿で知り合ったロブと朝食を食べた時の会話からこの小説に魅了されていました。ロブはネパールに来てから冷たいものも熱いものも食べていないとマチに不満を言います。マチはネパールの人は指を使って料理を食べるので、熱い料理を出したら火傷をしてしまうというロブとは違う見解を提示します。ささやかな発見、会話が面白いと思ったのです。そして、この会話がどんでん返しのヒントでもあったのです。読み終わった後に「やられた!」と思いました。ヒントはいくつも散りばめられていたのに。ちなみに犯人捜しの推理は、ど素人の私でも憶測できます。だからこそ、気を取られてしまっていたのか。

あとがきのこの一文が小説の全体を表していると思います。

たった一つの知識が物の見方を根底から覆し、別に知識が更なる修正を加えていく。やがて蓄積された知識は、お互いに矛盾しない、妥当だけれど思いがけない物の見方へと収束していく。 

古典部シリーズもですが、米澤穂信作品はミステリー+αがあるので、推理小説が苦手な人でも十分に楽しめます。

読んでから知ったのですが、「さよなら妖精」の登場人物が「王とサーカス」に登場しているそうです。(内容は連続していない)ベルーフシリーズとして、「真実の10メートル手前」も出ているので、こちらも読んでみたいと思います。

 

目次

 

 

1  祈るにも早い

2  トーキョーロッジ二〇二号室

3  レンズキャップ

4  路上にて

5  王の死

6  長い葬列

7  弔砲の夜

8  噂の街

9  王とサーカス

10 傷文字

11 注意を要する上出来の写真

12 茶話

13 尋問と捜索

14 ハゲワシと少女

15 二人の警官

16 INFORMER

17 銃と血痕

18 勇気の源

19 ペンを構える

20 がらんどうの真実

21 敵の正体

22 偉大なる場所

23 祈るよりも

あとがき

 

著者紹介

 

 

米澤穂信(よねざわ・ほのぶ)】

1978年岐阜県生まれ。

2001年、「氷菓」で第5回角川学園小説大賞奨励賞(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞してデビュー。青春小説としての魅力と謎解きの面白さを兼ね備えた作風で注目され、「春期限定いちごタルト事件」などの作品で人気作家として地位を確立する。11年に「折れた竜骨」で第64回日本推理作家協会賞、14年には「満願」で第27回山本周五郎賞を受賞」。「満願」は三つの年末ミステリ・ランキングで1位となり、また直木賞本屋大賞の候補にもなるほど、2014年最大の話題作となった。他の著者に「さよなら妖精」「犬はどこだ」「インシテミル」「追想五段賞」「リカーシブル」などがある。

 

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