辻村深月の初短編集!「冷たい校舎の時は止まる」の登場人物が絡む短編集「ロード ムービー」辻村深月

 物語が終わっても、彼らの道は続いていく。

「あの頃の僕に伝えたい。『大丈夫、いつかきっと平気になるときが来るから』って」

ロードムービー (講談社文庫)

ロードムービー (講談社文庫)

 

 「冷たい校舎の時は止まる」の原点。

 

内容 

 

「きっと、同い年で同じ教室にいたら、君は僕になんて見向きもしなかった。だけどいま、僕はきちんとここで立っている。僕は昔より楽に呼吸が出来ている。――だから安心していいんだよ」 いつかどこかで出会った彼ら。本を閉じても続く、あの懐かしい「校舎」へ。

ロードムービー

ロードムービー

 

運動神経抜群で学校の人気者のトシと気弱で友達の少ないワタル。小学5年生の彼らはある日、家出を決意する。きっかけは新学期、組替えで親しくなった二人がクラスから孤立し始めたことだった。「大丈夫、きっとうまくいく」(「ロードムービー」)。いつか見たあの校舎へ、懐かしさを刺激する表題作他。

 

感想

 

「冷たい校舎の時は止まる」とリンクしている短編集ですが、読んだことがなくても十分楽しめる作品だと思います。私は登場人物を薄っすらとしか覚えていなかったので、リンクしていることに気が付きませんでした。もちろん「冷たい校舎の時は止まる」のファンにはたまらない一冊です。

 

girl-book.hatenablog.com

 

辻村深月作品はこの1、2年で一気に読んできましたが、個人的に長編よりも短編の方がまとまっていて好きです。直木賞を受賞した「鍵のない月を見る」も短編集ですし。長編だとねっとりした文が長々と続くので、何作品か読んでいると「またか!」と思うことが正直あったので・・・。

「道の先」の登場人物の千晶がとても魅力的に描かれていると思いました。同級生よりも大人びていて、大人をも周りを魅了してしまう中学生。でも、中学生ならではの悩みも持っていて、その揺れ動く心に懐かしさも覚えました。(私は決して魅力的な中学生ではなかったけれど)

自分がきちんとこなした仕事を、それをしない人間に平然と使われること。宿題にしろ、忘れ物にしろ、彼女は苛立ち、割り切れないでいる。渋々とでも友達に見せたり、忘れ物を貸したりするのは、彼女の中のぎりぎりの譲歩なのだろう。

自分のことをきちんとする千晶。教科書を忘れた子に隣の子に見せてもらいなさいって無神経に言う先生が多過ぎると言う。今更ながら「確かに」と思ってしまう私。人によっては「そんなこと」かもしれないが、きちんとしている方からすれば納得がいかないのはわかる気がする。

 

目次

 

ロードムービー

道の先

雪の降る道

講談社ノベルスから刊行されたものは「トーキョー語り」「街灯」が追加収録されています。 

 

著者紹介

 

辻村深月(つじむら・みづき)】

1980年2月29日生まれ。千葉大学教育学部卒業。

2004年に「冷たい校舎の時は止まる」で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。他の著書に「子どもたちは夜と遊ぶ」「凍りのくじら」「ぼくのメジャースプーン」「スロウハイツの神様」「名前探しの放課後がある。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。

 

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