20世紀の文学を代表する作家「変身」フランツ・カフカ

 

変身 (新潮文庫)

変身 (新潮文庫)

 

 世界文学至上最高の問題作!

「変身」は、恐ろしい夢です。恐ろしい表象です。

「変身」は単なる動物譚ではない。

 

あらすじ

 

ある朝、気がかりな夢から目をさますと、自分が一匹の巨大な虫に変わっているのを発見する男グレーゴル・ザムザ。なぜ、こんな異常な事態になってしまったのか……。謎は究明されぬまま、ふだんと変わらない、ありふれた日常がすぎていく。事実のみを冷静につたえる、まるでレポートのような文体が読者に与えた衝撃は、様ざまな解釈を呼び起こした。

 

感想

 

世界的に余りにも有名な本の感想を書くのは緊張する。

朝、目を覚ますと自分が虫になっていたら・・・想像するだけで恐怖だ。しかし、主人公グレゴールは自分が虫になったことを冷静に受け止めている。パニックになるどころか、仕事に行こうと試みる。グレゴールの部屋から巨大な虫が出てくると、家族は驚きながらもその虫をグレゴールだと認識している。あまりに衝撃的な出だしに関わらず、淡々とした文章が進む。どうやら人間に戻ろうとする単純な話ではないといういことが理解出来る。

一家の大黒柱であった自分が虫になってしまう、家族の生活はどうなってしまうのかと不安に思い、家族の会話を盗み聞くシーンが頻繁にある。今まで食べていた人間の食べ物が口に合わず、壁や天井を這い回っても、心は人間グレゴールのままのようだ。自分が良かれと思いとった行動が家族に恐怖と怒りをかい、終いには父親の投げた林檎が背中にめり込み、気を失う。重症を負ったグレゴールは永遠に体を自由に動かすことが出来なくなる。

グレゴールの面倒を引き受けていた妹も次第にぞんざいな扱いをするようになる。自分の姿が変わっても、どんな扱いを受けても、妹を想う気持ちは変わらない。見た目が変わっても自分自身にかわりはないということをグレゴールだけでなく、家族もわかっている。だから大胆な行動を取る。「もしこれがグレゴールだったら、人間がこんなけだものと一緒に住んでいられないということくらいのことはとっくにわかったはずだわ、そして自分から出て行ってしまったわ。きっと」と妹は叫ぶ。後味が悪いとも言えるし、見方によっては希望の見える結末でもある。

カフカは「変身」の扉絵に昆虫を描かれることを猛反対し、両親と妹が明るい部屋にいて、暗い隣室へのドアが開いているところをカフカは提案している。グレゴールの姿について細かい描写はない。もし、虫ではない姿だとしたら? 小説の見方がまた変わる。