「空に牡丹」大島真寿美
親族が皆語りたくなるという静助さんの物語です。
明治時代を生きた偉人でも賢人でもない、凡人の静助さんの話が今でも語りづかれている、花火に魅せられた静助さんんとは一体どんな人なのか?
バラメータ
恋愛度
「許すも許さないもないから、好きにしたらいいと言っておいた。今はそういう時代だからね。そのうち、二人してここへ報せに来るだろう。さて、婚礼はどうしたものかなあ。(省略)」
家族度
丹賀宇多村に戻った粂に庄左衛門は言ったものだ。おまえ、もう洋物店はいいのか。
粂は返した。もういいですよ、もう気がすみました。
そうか、気がすんだか、と庄左衛門はうなずいた。気がすむまで、庄左衛門は、粂を好きにさせてくれたのだ、と粂はその時思い知った。
オシャレ度
本音を言えば、粂こそが洋装をしてみたかったのである。
けでども、丹賀宇多村で、女だてらに先陣を切るのはさすがに難しかった。
そこで、ならばまず庄左衛門から、と粂は考えたわけだ。
洋装もなかなかいいじゃないかと周囲に認めさせたいから、粂はずいぶん張り切った。洋服に合う洒落た帽子を被せ、ステッキを持たせ、靴を履かせた。懐には時計や老眼鏡。ポケットからこれ見よがしに取り出す筆記用具は太い万年筆。
念には念を入れ、シャボンで身体を洗わせ、髭を整えさせた。