この道がずっと続けばいいと思うこともある。
ここから早く抜け出したいと思うこともある。
待ってて。きっと扉は開くから。
内容紹介
辻村深月の長編小説のスピンオフです。
「冷たい校舎の時は止まる」「ぼくのメジャースプーン」「凍りのくじら」「名前探しの放課後」を読んだ後の方がより「光待つ場所へ」が楽しめるのではないかと思います
目次
しあわせのこみち
T大学の二年生・清水あやめは学力でも絵でも勝ち、負かしてもらえないということへ失望とそれ以上に安堵していた。自由に世界を表現する「造形表現」の授業で田辺颯也の映像作品に生まれて初めて圧倒的な敗北感を味わい・・・。
「冷たい校舎の時は止まる」に登場したクラス委員の一人、清水あやめが主人公です。もちろん、あやめと同じT大学生になった鷹野博嗣も登場します。
チハラトーコの物語
美人でスタイル抜群のオタクの千原冬子は嘘つきだ。「世界と繋がりたいなら、自分の力でそれを実現させなさい」気に食わないことに脚本家・赤羽環に言われた言葉を思い出す。
「スロウハイツの神様」のチハラトーコが主人公です。「太陽の坐る場所」キョウコが主演した映画についてもチラリと触れられています。
樹氷の街
中学最後の合唱コンクールに指揮を振る天木は、倉田のピアノ伴奏が途中で止まり、練習が進まないことに悩んでいた。同じクラスの松永郁也が天才的なピアノの腕前を持つことを知る。
「凍りのくじら」「ぼくのメジャースプーン」の登場人物が中学生に成長し、出てきます。
オススメ度 星2つ ★★☆
これぞ青春小説!
恋愛度 星3つ ★★★☆☆
「樹氷の街」の倉田さんのように“好きだってこと”を宣伝するように騒ぐ気持ちもわかります。でも、「しあわせのこみち」のあやめの気持ちは「冷たい校舎の時は止まる」を読んでいる私はあやめの方が感情移入してしまいました。
しあわせのこみち
鷹野の顔を何枚もスケッチした。させてもらった。けれど、私の描く画面の中で鷹野は前を向いている。画面の外から見ると、それは完全な後ろ姿だ。後ろ姿の鷹野博嗣。けれどわかる。彼が今どんな表情をしているのか。私はいくらでも思い出すことができる。
友情度 星3つ ★★★☆☆
友達の定義は難しいです。
田辺が言うように一時は繋がっていても離れてしまう友達もいます。
その違いがなんなのかは私にはまだわかりません。
しあわせのこみち
「人の悲しみや怒りに同調するのは、多分簡単できる。でもね、相手が幸せになったとき、それを心から喜ぶのは難しい。―関係が浅い友人同士なら、きっと何でもないことだけど、関係が深くなればなるほどね。俺も、俺の周りも、今までそうやって繋がっては切れてきた」
家族度 星1つ ★☆☆☆☆
子供にとって母親がほとんど全ての世界になりやすいと思います。
近過ぎて、母親の嘘や見栄も幼いながらに感じ取ります。
チハラトーコの物語
ママの嘘は、半分が自分のためだけど、もう半分は私のためだった。柔らかく白い手に頭を撫でられながら、しっかりそう感じた。
イケメン度 星2つ ★☆☆☆☆
辻村作品には必ずといっていいほど所謂 “イケメン” “美人” と称される人物が登場します。小説なので、顔は自分好みのにイケメンを想像して、読み進めていけばいいのですが、どうも中身が私のイケメン像とは離れているようです。
樹氷の凍り
秀人とは、小学校からの付き合いだった。そのときから妙に老成した奴だという印象を持っている、時に嫌味に思えるくらい落ち着いていて、状況を一段上から見下ろしているように感じる。
オシャレ度 星2つ ★★☆☆☆
ファッションは自分の印象を自由に変えることが出来ます。
ところがそれには服だけでなく、ヘアスタイルからメイク、爪の先だって気を抜くことは許されません。
中途半端なファッションは中途半端な自分を表しているのに過ぎない・・・オシャレは奥が深く、難しいです。
チハラトーコの物語
どこまでも徹底して「リディア」を演じてしまえばいいのに。まだ突き抜けることができないのだろうか。私が十九歳のときには、もうしっかりとその辺りの姿勢は確立されていたものだったけど。
グルメ度 星1つ ★☆☆☆☆
中学生なんだから、このおもてなしはフツーに嬉しいだろ!と突っ込んでしまいました。みんな大人びているのか、気取っているのか。
樹氷の街
彼女がすごくはりきってもてなそうとする、という松永の言葉は、実際にその通りだった。
手作りのケーキが生クリームとチョコの二種類。それに、ミカンとモモを沈めて固めたゼリー。横には、市販の袋菓子やペットボトルのジュースもたくさん並んでいた。
感想
今まで読んできた辻村小説の登場人物が出てきたので、3作品とも小説の世界観に入りやすかったです。
「ぼくのメジャースプーン」のふみちゃん(椿)はイメージ通りの成長だったけど、ぼく(秀人)は男らしくなっていて寂しかったです。小学生から中学生になっているので、当たり前なのですが、可愛さがなくなっています。
個人的に辻村さんは長編ではなく、このくらい(中編?)長さの小説がコンパクトにストーリーがまとまっていて読みやすくて好きです。長編は主要人物たちの幼少期に付箋があるので、回収していく作業に頭が使われてしまうので。
リンクしている作品はある程度キャラクターが固定されてきていて、知らないはずの新しい登場人物にも「こういうタイプね」と勝手に判断するようになっています。自分が好きなキャラクター、愛着がある登場人物であれば嫌悪感は抱かないのですが・・・新鮮さがなくなっているように感じてしまうのは悲しいです。
「樹氷の光」は中学生が合唱コンクールに向け、クラスメイトと奮闘する内容です。私自身、合唱コンクールはクラス一丸となって練習した思い出があるので、読んでいて懐かしく感じました。