「ぼくのメジャースプーン」辻村深月
あらすじ
主人公のぼくには不思議な力があります。「もしも、『何か』をしなければ、『ひどいこと』が起きる」と相手を言葉で縛ることができ、相手は『ひどいこと』が嫌で必死になって『何か』をやり遂げようとします。ぼくはお母さんと力を使わないと約束します。
ところが、市川雄太に学校で飼っていたうさぎ殺され、無残な死体を発見した幼馴染のふみちゃんはショックのあまり感情を失います。ぼくは不思議な力を使い、ふみちゃんを助けたいと同じ力を持つ先生の所に通い始めます。
力について学ぶと同時に正義や罪の重さについても考えることになります。ぼくが最後に選んだ市川雄太へ使う力は何なのか?推理しながら読みすすめていきます。
第60回日本推理作家協会賞長編及び連作短編部門ノミネート
目次
プロローグ
第1章 眼鏡のふみちゃん
第2章 ふみちゃんのうさぎ
第3章 うさぎの声
第4章 声の先生
第5章 先生の飴
第6章 飴の無知
第7章 無知の過ち
第8章 過ちのぼく
第9章 ぼくのメジャースプーン
第10章 メジャースプーンのなかみ
第11章 なかみの秘密
エピローグ
バラメータ ※ネタバレあり
恋愛度 ☆☆☆☆☆ 星0つ
友情度 ★★★★☆ 星4つ
ふみちゃんのような友達がいたら私も自慢したいです。
ふみちゃんのようになれるなら私もなりたいと思います。
素敵な女の子です。
ふみちゃんを大切に想うぼくも素敵です。
第一章 眼鏡のふみちゃん
「ぼくは、ふみちゃんに、いつも堂々としてて欲しいんだ。そんな友達、ぼくにはふみちゃんしかいないよ。ぼくはふみちゃんと仲がいいことが自慢なんだ」
友達だけど、ちょっと憧れだから。
家族度 ★☆☆☆☆ 星1つ
ぼくとお母さんが明日の朝のパンを買って帰る途中での会話が好きです。
お母さんの何気ないようなふみちゃんの話。
お母さんのぼくに対する愛情が伝わってきます。
第5章 先生の飴
話はそこでおしまいだった。ぼくたち二人は、それからお互いに黙ったまま、俯いて歩く。家に着くと、それを待っていたようにお母さんがぼくに尋ねた。
「明日も、頑張って行けそう?」
「うん」
イケメン度 ★☆☆☆☆ 星1つ
ここのシーンは読み返しただけで胸が痛くなります。
ぼくにとって、ふみちゃんは特別な存在です。
ふみちゃんを大切にするぼくの心がイケメンです。
第2章 ふみちゃんのうさぎ
ぼくは、自分だけは違うんだと思ってた。ぼくだけが、ふみちゃんの「特別」なんだと思ってた。ふみちゃんに優しくしてもらえるのを当然のように受け入れて、そこに感謝の言葉もない女子たちとも、彼女を平気でブス扱いをする男子とも、ふみちゃんの完璧さに何の疑いも持たない他のクラスメートたちとも違う。ぼくだけには、ふみちゃんが本音を話してくれる。舞台裏の弱い顔を見せてくれるんだと思っていた。
ぼくは、それが自慢だった。ぼくだけは、そうじゃなきゃダメなのに。
オシャレ度 ★☆☆☆☆ 星1つ
校則や規則、周りと浮かない無難な格好を選んでしまう私には“〇〇らしくない”というのが羨ましいです。
第4章 声の先生
「市内で先生をしながら僕のとこころにも勉強に通っているんです。まだ担任は持っていないそうなんですが、お化粧も服装も、先生らしくないでしょう?」
グルメ度 ☆☆☆☆☆ 星0つ
食べ物は物語の重要なキーワードです。
感想
心から反省するとはどういうことなのか。
罪、罰とはどいうことなのか。
主人公は小学生、殺されるのはうさぎということで、重くならずに読みやすくなっていますが、考えさせられる内容の小説だと思います。
ぼくはふみちゃんの為に不思議な力を使おうとしているのか。
それとも、責任を感じ、自分自身の為に力を使おうとしているのか。
自分でもよくわからない状態になります。
先生はぼくに諭します。
「馬鹿ですね。責任を感じるから、自分のためにその人間が必要だから、その人が悲しいことが嫌だから。そうやって、『自分のため』の気持ちで結びつき、相手に執着する、その気持ちを、人はそれでも愛と呼ぶんです」
ぼくが先生に出会えて本当によかった・・・と心から思います。小学生の男の子には荷が重過ぎる問題ですから。