働かないっていけないこと?第124回直木賞受賞作「プラナリア」山本文緒

働かない彼女たちが抱えるやるせない想い。

プラナリア (文春文庫)

プラナリア (文春文庫)

 

内容紹介

目次

プラナリア

乳がんで右胸を取った主人公。まわりは「もう治ったんだから」と言うが、月に一度は病院に行かなくてはいけないし、吐き気もする。本当に治ったことになるのだろうか?

ネイキッド

離婚をし、無職になった主人公。暇な時間を潰すために編みぐるみ作りにはまっている。友人は離婚したから無職だからと色々お世話をしてくれるが・・・。

どこかでないここ

夫がリストラされ、パート勤めに出た主人公。子どものために寝る間を削り働いているのに娘の気持ちがわからない。

囚われ人のジレンマ

長年付き合ってきた彼氏に「結婚してもいいよ」と言われた主人公。自分の欲と得を考え結婚するか、別れるか、ジレンマする。

あいあるあした

居酒屋を営む主人公の家と店に居座る手相占いができる女。働きもせず、お店で出会った人とふらりと消える女に主人公はいつしか夢中になっていく。

 

 

オススメ度 星3つ ★★★

現代女性の揺らぐ心が書かれた短編小説

恋愛度 星2つ ★★☆☆☆ 

乳がんになっても変わらず愛してくれる恋人。

人前で「乳がん」であることを発言するのを嫌がる恋人。

友情度 星1つ ★☆☆☆☆ 

良かれと思っているのはわかる、親切にされているのもわかる。

でも、それが余計なお節介、うざったくなっていまう時があるのです。

家族度 星2つ ★★☆☆☆

両親に愛されて、甘やかされ過ぎて育った主人公。

病気を両親のせいにして、八つ当たりしていまうところは家族だからこそだと思う。

イケメン度 星1つ ★☆☆☆☆

病院で知り合った美人の永瀬さんは男ではないが憧れる。

オシャレ度 星0つ ☆☆☆☆☆ 

オシャレ度はない。

グルメ度 星0つ ☆☆☆☆☆

居酒屋で飲むシーンはあるがグルメ度としてはないに等しい。

 

 

感想

元彼が嫌いな作家(ただの読まず嫌いでしたが)ということもあって、ずっと手をつけてなかった山本文緒さん。

初めて読むなら直木賞を受賞しているベストな小説を読みたいと思い、「プラナリア」を購入した。

「え!面白いじゃん!」というのが感想。

引き込まれる文章力と魅力を備えているわけではないのに気になる主人公たち。

今までなんで読まなかったんだろう?いや、今だから素直に面白いと思えるのかもしれない(ということにしておこう)

「働かない」ことをテーマに書かれている。

幼い頃から「働かざるモノ食うべからず」と聞かされて育った多くの日本人にとって、働かないことに罪の意識を感じる。

出来れば働きずに生きたいと願っても、いざ仕事を辞めると案外やることがなく、時間は有り余る。なのにボーっとしてるとあっという間に1日は終わってしまう。社会に取り残された気がして、あんなに辞めたいと思った仕事も懐かしく、また働きたくなる。私の場合はそうだった。

この小説に登場する彼女らは違う。働かないことに対して罪に意識や焦りはない。他の小説の主人公たちのように好感度も向上心もない。自由奔放というのかお気楽というのか、羨ましくもあり軽蔑もしている自分がいる。

どの短編もきちんとまとまっていて、きちんと面白い。捨てがない短編だった。最後の短編が「あいあるあした」で救われたような気がする。

※ちなみにプラナリアとは下のような生き物みたい・・・うーむ。

 

 

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