「ダンス・ダンス・ダンス」村上春樹
鼠三部作を読み終わり、その流れで「ダンス・ダンス・ダンス」を読んだ。何回か読んでいるはずなのに所々内容を忘れているところがあって、数年前とまた違った視点で楽しむことが出来た。私が生まれる前、80年代が舞台の話なのに全く古いと思わせないところが好きだ。
あらすじ
1983年3月、フリーライターとして「文化的雪かき」をする“僕”はキキに会いに札幌にある「いるかホテル」に向かった。しかし「いるかホテル」は巨大なビルディングに変貌していた。同級生が出演する映画にキキを発見した“僕”は、キキを探す冒険に出る。
感想
「ダンス・ダンス・ダンス」はいくつかのストーリーが重なっている長編小説。僕がこちら側に戻ってくる話でもあるし、キキを探す物語でもある。その中で今回私は気が付くと“13歳の美しい少女ユキ”を中心に読んでいた。
自分が13歳だった頃(ユキのように美しくはなかったけれど)を思い出し、これから親になるかもしれない(今のところ予定はないけれど)という気持ちの芽生えもあるかと思う。
思春期はユキのように感が鋭くなくても、両親が有名でなくても親の存在は必要だと思う。いくら大人びた発言をしても子供は子供には違いない。
「いいですか、あの子に必要なのは親の愛情なんですよ。誰かが無償で心から自分を愛してくれるという確信なんです。そういうものは僕が彼女に与えることはできないんです。そういうことができるのは親だけなんです。そのことを、あなたもあなたの奥さんもきちんと認識すべきです。それが第一。第二に、あの年代の女の子にはどうしても同じ年代の同性の友人が必要です。シンパシーを感じあえていろんなことをストレートに話しあえる同性の友人、そういう相手がいるだけでずいぶん楽になる。・・・(省略)・・・」
ダンス・ダンス・ダンス(上巻)
“僕”はこの小説の登場人物の中では唯一“まとも”な存在のようにも思える。
「あなたは彼女と友達になりたいと言う。それは良いことです。もちろん。でもいいでうか、あなたは彼女にとって友達である前にまず母親なんです」と僕は言った。
ダンス・ダンス・ダンス(下巻)
私がユキだった頃、どうやって問題を解決していったのだろう。解決せず時の流れに任せている問題もある。今もそうやってやっている。
「いやでもみんあ成長するんだよ。そして問題を抱えたまま年をとってみんないやでも死んでいくんだ。昔からそうだったし、これからもずっとそうなんだ。君だけが問題を抱えているわけじゃない」
ダンス・ダンス・ダンス(下巻)