「盲目的な恋と友情」辻村深月
周りの声など耳に届かぬほど夢中だった恋愛、友人に嫉妬していたあの頃・・・女性には誰にでも芽生えるであろう感情が目を背けたくなるほど、ドロドロと描かれています。 タイトルの文字通り“盲目的”です。
あらすじ
元タカラジェンヌの娘である美しい容姿の一瀬蘭花、容姿にコンプレックスを持つ傘沼留利絵は大学の楽団で知り合い仲良くなります。楽団の指揮者である茂実星近と蘭花が恋人関係になり・・・
蘭花の視点で「恋」をテーマに、留利絵の視点で「友情」をテーマにそれぞれの観点から描かれた小説です。
バラメータ
恋愛度 ★★★★★ 星5つ
数少ない私の恋愛経験でもわかります。
好きでなければ別れるのに・・・所謂、ダメ男と言われる人と付き合う女性の口癖です。
本当にいい男はそんなこと思わせないです。
好きでなければ別れられるのに、と、私だって、思った。
友人だから言わないこと、言えないことがあります。
とりわけ恋愛に関しては。
―だけど、そういうものじゃないのに、という本音だけは、死んでも言うわけにはいかない、と感じていた。
相手の仕事をいつから観ていたとか、作品が好きだとか、そんな、高尚なことは、恋の前には何の価値もないのだ。
留利絵への友情から、私はそう言いたいのを黙っていた。
友情度 ★★★★★ 星5つ
どうして、いつの日も、友情は恋愛より軽いものだというふうに扱われるのだろうか。
留利絵の他人に対する感情が私には理解出来ません。
蘭花への友情、美波への敵視・・・それが自分の見た目からのコンプレックスからなのか、それとも星近が言うように誰からも愛されたことがないからなのか。確かに恋を知らない小学生は留利花のような行動を取るような気もします。
「君さ、誰にも愛されたことがないでしょ」
声を、失う。
茂実は微笑んでいた。
「誰にもきちんと執着されたことがないから、友達のことをまるで自分のことみたいに躍起になるんだよ。気色が悪いね」
「どういう、意味ですか」
声が震えた。
訂正して、撤回して、今の言葉を、なかったことにしてほしかった。けれど、茂実が冷淡に言う「そのままの意味だ」と。
「君は子供っぽいよ。そろそろ蘭花を自由にしてくれないか」
家族度 ★☆☆☆☆ 星1つ
何も言わなくても母親にはお見通しです。
茂実を実家に連れて行くこともなくなった私に、直接的なことは何も言わなかったけれど、ママは、「私が余計なことを言ったせいかしら」と、ある日、尋ねてきた。
「大学に入ったら、誰でもいいから付き合いなさい、なんて。ママ、言わなければよかった?」
イケメン度 ☆☆☆☆☆ 星0つ
初めの茂実星近は特別感があり、魅力的に見えます。
でも、知れば知るほど平凡であることが浮き彫りになります。
オシャレ度 ★☆☆☆☆ 星3つ
茂実が蘭花を連れて行くお店はどこもオシャレです。
女性受けがいいお店をたくさん知り、顔パスできる理由を気がつけないのは蘭花が茂実に恋をしているからか、恋愛経験が少ないからなのか、それとも性格が客観的だからなのだろうか。
茂実は、センスがよかった。このネックレスに限らず他の贈り物も、身につけているものも、連れて行ってくれる店もがっかりさせられることは一度もなかった。
コース料理で出てくる、けれど気取ったところのないおいしいレストランをいくつも知っていて、彼がウェイターに「どうも」と会釈するだけで、打ち解けた雰囲気になるのが心地よかった。
グルメ度 ☆☆☆☆☆ 星0つ
料理は作ったり、食べたりしていますが印象的なシーンはないです。
感想
蘭花は自意識が高く、相手のことを考える、思いやることがありません。留利花と美波はその蘭花の性格を“客観的なところ”が好きと言いますが、恋はしているとはいえ、あまりにも自分たち蘭花と茂実だけの世界に執着していて恐いです。
恋愛というのは、彼女がしている、あんな、“ありきたりなこと”ではなく、私と茂実のような“特別ば、かけがえのないこと”だ。
私の身に起こったのは、そういうことだ
美波には、わからないのだ。
恋愛は確かに特別なことです。特別ですが、恋愛は誰にも起こります。何も蘭花と茂実だけが恋愛しているわけではありません。
留利花もまた自意識が高い女性です。自分の容姿へのコンプレックスから、言葉のDVに遭ってきたと被害者妄想が膨らんできます。容姿端麗な蘭花と一緒にいる、仲が良いことがコンプレックスが介抱される時です。その為に留利花は蘭花に尽くします。
感謝は、ないのか。
と思ったことで、初めて、私は、自分が祝福など、していないことを知った。
今日、ここに至ったことに、私への、感謝はないのか。
私がしたことに、気付いていないなんて、言わせない。
恋愛も友情も相手に見返りを求めてはいけません。