「太陽の坐る場所」辻村深月
「太陽の坐る場所」の人物たちと同じように高校を卒業してから10年が経ちました。
クラス会はお盆とお正月の年に2回ペースで地元で開催され、タイミングが合えば参加しています。
学生時代はあだ名で呼んでいたクラスメイトたちを10年経ってもあの頃と同じように呼ぶこともあるし、苗字で呼んでいた子が結婚し、苗字が変わっていたりすると呼び方に一瞬戸惑いを覚えます。
端から見たら、どの人がどの人かわからず混乱すると思います。
この小説も同じです。あだ名で呼ばれる子もいるし、同じ名前の子もいます。どの子がどの子なのか第三者である読み手の私たちは推理しながら読み進めなくてはいけません。
あらすじ
高校を卒業してから10年、毎年開催されるクラス会には女優になったキョウコは出席してない。次こそ参加して貰おうとキョウコへ連絡を取った同級生は連絡が取れなくなっていく・・・。
目次
プロローグ
出席番号二十二番 半田聡美
出席番号一番 里見紗江子
出席番号二十七番 水上由希
出席番号二番 島津謙太
出席番号十七番 高間響子
エピローグ
バラメーター
恋愛度 ★★★★☆ 星4つ
全ては響子の一目惚れから始まっています。
進学先が片思いの相手次第というのは、10代だからこそ出来ることです。
出席番号二十二番
「塾の夏期講習で出会ったのが最初なんだって。響子ちゃんが席に着いてたら、後から清瀬くんが遅刻して教室に入ってきた。で、そこで一目惚れ。清瀬くんの志望校が藤見だってことがわかって、響子ちゃんはそれを追いかけた」
女性慣れしている男性というのは相手を動揺させるようなことを言って、その反応で脈ありかどうか判断しているような気がします。男性経験が少ない程、この手口に引っかかりやすい気もします。
出席番号一番
「やばいんだよね」
顔を向けると、表情を変えないまま、目線も合さずに彼が言った。
「これ以上、好きになんないように気をつけないと」
友情度 ★★★☆☆ 星3つ
スクールカーストというと大げさに聞こえてしまうかもしれないが、確かに学校ではそのようなものがあったと思います。会社にだって、社会にだって、存在している当たり前にあります。
出席番号二十七番
華は華で、地味は地味。もてる女子はお互いを引き立て、もてない者たちは集団で埋没するだけ。男子も派手なグループの女子にしか話しかけない。「あの子たちはかわいい」というグループ単位の評価が基準なのだ。
家族度 ☆☆☆☆☆ 星0つ
イケメン度 ★★★★☆ 星3つ
清瀬陽平は顔だけでなく、行動がイケメンです。場を平和に片付ける力を持っています。女王の響子が惚れてしまうのも納得がいきます。
出席番号二番
「あららら、どうした?吉田。由希ちゃん守ってあげてんの?」
今しも誰かに向けて振り上げそうだった彼の拳をちらりと一瞥し、場違いなほど明るい笑みを浮かべる。緊迫した状況がわからないわけでもないだろうに。
「お前、だけど力を考えろよ。お前に手ぇ出されたら、俺だって吹っ飛ぶつーの」
「何だよ、まだ誰も殴ってねぇよ」
「だったらそれでいいって。お前、絶対手加減しないもん。問題にならなくて、マジよかったじゃん」
それから由希に顔を向け、からかうように笑った。
「愛されてるね、由希ちゃん。―吉田さぁ、見せつけんなよ」
オシャレ度 ★★★☆☆ 星3つ
女性は男性を初めてのデートよりも、友人との久しぶりに再会するの時の方がオシャレに気をつけます。
出席番号二十二番
常盤が海外に行った際にお土産で買ってきた、ダイヤの形をした香水の瓶を初めて開けた。膝の裏に振りかけると、いい匂いがして自分が上等なものになったような気がした。持っている中で一番ヒールが高い靴を履き、玄関先の鏡の前で思い直して、口紅だけはしっかりと艶が出る色を塗った。
グルメ度 ★☆☆☆☆ 星1つ
自分が行き付けのお店に知人と行くのは緊張します。
そのお店で自分がどのような人物か知られていまうような気がするからです。
紗江子が真崎修と行くお店に聡美を連れて行く意図や聡美のお店に対する感じ方の両方が読み取れて楽しかったです。思惑通りにそうそういかないです。
感想
私は女王だったわけではないけれど、学生時代の何かに囚われいる部分が未だにあると思います。過去の栄光、過ち・・・高校時代に女王から陥落までを味わった響子であればなお更でしょう。そこから脱却させてくれるのは、女王の座を墜落させた張本人です。スクールカーストは本当に存在していたのでしょうか?気にしていたのは実はわずかな学生だけだったのではないでしょうか?
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