2014年本屋大賞第3位!島が舞台の青春小説!大人になる前に知った大切なこと「島はぼくらと」辻村深月

2014年本屋大賞第3位!

島はぼくらと (講談社文庫)

島はぼくらと (講談社文庫)

 

内容紹介

瀬戸内海の冴島に暮らす高校2年生の朱里、衣花、源樹、新の4人は毎日フェリーで学校に通っている。Iターンでやってきた本木が島の真ん中の好立地な場所に住むのか、島に医者はいない理由、島に伝わる“幻の脚本”とは・・・?島を出る、大人になる前に知った大切なこと。

登場人物

池上朱里

伸びやかで純粋。

くじ引きで「さえじま」の社長になった母と祖母と女3人暮らし。

茅野衣花

感が鋭い美少女。

「綱元の娘」綱元の家の子どもは、島の外に出ない。

青柳源樹

髪が金に近いため「不良」と言われている。

リゾートホテルを経営する父に連れられて、2歳の頃に冴島にやってきた。

矢野新

練習に30分しか出られないにも関わらず演劇部に所属している。

矢野家の家訓は必ず「行ってきます」「行ってらっしゃい」を気持ちよく言うこと。

 

オススメ度 星2つ ★★

田舎の高校生の青春小説好きにオススメ

恋愛度 星1つ ★☆☆☆☆

恋愛要素は少なめな分、少女漫画っぽい、単純な先が読める恋愛の展開には少々ガッカリ。

だからといって、違う人とくっついても・・・なんだけど(わがまま)

友情度 星5つ ★★★★★

朱里と衣花

源樹と新

蕗子とヨシノ

母、そして祖母の友人。

この小説には様々なタイプの友情が存在する。

大人になってから友だちを作るのは難しい。

職場の付き合い、ママ友の付き合いも環境が変わってしまえば自然と疎遠になってしまう。自分が大人になってからの友達作りに苦労しているからかもしれないが、ヨシノと蕗子の関係が羨ましく思えた。

気まずそうに、ごまかすように。こんあ表情でぎこちなく笑うヨシノは初めてだ。

「今はいい子だけど、微妙な年頃だし、ここ最近は、帰るたびに、次は拒否されて嫌いになられているんじゃないかって心配なの。正直、怖い。フキと未菜が一緒に来てくれるなら、心強いんだ」

――友達になってよ、と言っているのだと、朱里には聞こえた。もうここからは、冴島は彼女の職場じゃない。蕗子は、仕事相手ではない。

家族度 星3つ ★★★☆☆

父親だからこその感情。

思春期だからこの感情。

好きだからこその感情だと思う。

ありがとう、と母に向け、心の中でお礼を言って、お盆を胸に引き寄せて持つ。手に、ぐっと力が入った。素知らぬ顔をして座って、こっちを見なかった父に対して、卑怯者、という言葉が今にも口を衝いて出そうになる。

卑怯者、卑怯者、卑怯者。

――だから嫌いなんだ、と呟く。奥歯をぎゅっと噛みしめた。

イケメン度 星2つ ★★☆☆☆

源樹は学校でモテる。

高校生の時は源樹みたいなタイプがモテる。

私だって好きだ。

ホテル経営者の息子だし(え

オシャレ度 星2つ ★★☆☆☆

衣花の下校のファッション。

田舎だからといって気を抜いていない。

「どうせ帰るだけだし・・・」となってしまう私は見習わなくてはいけない。

お母さんが通販してくれたという折りたためる麦わら帽子は、つばが広くて。まるで女優のバカンス用だ。その上、うっすら赤く色がついたサングラスまでしている。そして、制服に似合わない帽子もサングラスも、この子にかかるとミスマッチまで含めて、おしゃれな印象になっていまう。

(省略)

帽子とサングラスなんて芸能人気取りに見えるよ、と言ったら、衣花は笑って「島に帰る時なんて、どうせ朱里たちにしか会わない」と唇をすぼめた。

グルメ度 星2つ ★★☆☆☆

海の幸や山の幸はたくさん出てくるが、美味しそうに食べているシーン(細かい描写)はほとんどない。

本木のフルーツポンチは美味しそう。

新の家のカレーは美味しいらしい。

 

 

感想

カバーイラストが漫画なので登場人物がイメージしやすい「島はぼくらと」を読み終えました。(カバーイラストは漫画家の五十嵐大介さん)

こちらの本も日常生活の中に潜む謎解きがあって楽しめました。

島での暮らしはIターン、ロハスという言葉が登場したように現代人の憧れの暮らしの一つである。

それはたぶん“のんびりとした暮らし”が出来そうというその他の要素を抹殺してしまうほどの大きな漠然とした魅力的なイメージが先行しているからだろう。

島だけでなく都会でもどこに住むにしても、その土地に暮らす人々に気に入ってもらう、合わす努力をしないと簡単には受け入れてもらえない。人との結びつきが都会よりも田舎ましてや島だとなお更だ。何かあった時に助けになるのは近所の人々なのだ。そこには昔から島での暮らしている人の仕来り、暗黙のルールもまたある。それを知り、理解することも暮らしていくには重要なことである。

わかっていても、そう簡単なことではない。自分の力だけでは限界もある。

そんなIターンの人と島の人を結びつける役割をしているのが『プロセスネット』で働く地域活性デザイナーのヨシノである。モデルは著者の知人・コミュニティデザイナー西上ありささん。ネットで検索すると情報が出てくるので、仕事っぷりは確認できる。

この小説は働くこといついても考えさせられる。

働くということは稼ぐ以外の意味もある。

「フキちゃん。『さえじま』はね、儲からなくていいんよ。会社だっていって、みんなでははりきって、――だけど、成功例にならなくても、テレビで紹介されなくても、有名にならなくてもいい。主婦の、私たちのお小遣い稼ぎになれば、それでよかった会社なんよ」

(省略)

「断るのは、強がりじゃない。――私が『さえじま』を作ったのは、島のおばちゃんたちに、居場所を作りたかったからなんだ」

最後に私が好きな文を紹介。

オリンピックでメダルを取った蕗子に講演会の話を持ちかける村長に対し、朱里と衣花が言った言葉。

「話なら、聞きたい時に自分で聞くからいいよ。それに、『夢』なんて蕗子さんに失礼だよ。蕗子さんがやってきたのは、私たちから見たら夢かもしれないけど、きちんとした蕗子さんの現実なんだから」 

 

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