「誰かが足りない」宮下奈都
全国の書店員が選ぶ「本屋大賞」2012年の7位の作品。
宮下奈都さんは2016年も「羊と鋼の森」がノミネートされている。
書店員にも人気の作家なのですね。
漫画大賞にしても本屋大賞にしても面白い作品を知るキッカケになるから好き。
「誰かが足りない」は美味しいと評判のレストラン「ハライ」に同じ時に訪れた6組の客の物語。
あらすじ・目次
プロローグ
予約1
内定が出ていた会社が倒産したのは大学四年の冬休み明け。大学一年の頃からアルバイトをしていたコンビニが事情を汲んで社員に登用してくれ、今も働き続けている。
予約2
「最近、どんなニュースがありましたか?」という質問は不愉快だ。認知症の症状が出始め、考えると頭が痛くなる。
予約3
同僚たちの中からなぜか女の私一人が係長になった。毎日残業し、土曜も出勤。家緒を出ると隣の家の幼馴染ヨッチャンの車が止まっていた。
予約4
母の病気以来、部屋からこもるようになった。ビデオカメラを回せば部屋から出られるようになり、妹と妹の友人と会話をすようにもなった。
予約5
オムレツ係りの僕は毎日毎日オムレツを焼いている。時々来る彼女の為にタイミングを見計らって一人分の美味しいオムレツを焼く。
予約6
幼い頃から人の失敗を嗅ぎ取ってしまう私は通りすがりの青年にふと叔父を思い出し、勇気を出して声をかける。
バラメータ ※ネタバレあり
恋愛度 ★☆☆☆☆ 星1つ
予約1
学生時代から付き合っていた未果子がいけすかない同期と結婚をする。
失恋の話でもある。
「偽物でしょう」
何が、と聞かなかった。あなたが、と答えられるのが怖かったからだ。偽物だとか、ちょっとおかしいとか、いわれてい僕がほんとうに偽物なら、おかしいなら、未果子の言葉は誰がどう受け止めればいいのだろう。
「偽物よ。全部偽物なのよ」
友情度 ★★☆☆☆ 星2つ
予約4
友人を守るために兄に午後十時に寝るように妹の遥花。
兄想いでもあり、友人想いでもある明るい遥花はとても素敵。
「遥花は私をぎゅっと抱きしめてくれていました。私は泣いて震えるばかりだったけど。遥花の腕の温かさが『今』なんだってあるとき気づいて、はっとして、もう過去のことで震えたり泣いたりするのはばかばかしいって思えたんです」
家族度 ★★☆☆☆ 星2つ
予約2
認知症の女性が主人公。
たまにふと思い出す亡くなった夫の存在が切ない。
「おとうさん」
いつもそこにいた人の名前を呼ぶ。結婚して何十年も、この家にずっと一緒に暮らしてきた人。
「おとうさん」
子供が生まれて、お互いを、おとうさんおかあさんと呼び合うようになっても――呼び合うようになったからこそ、絆は強まった。そこにいてくれなくてはいけない人。そして、きっと、もうそこにはいない人。
イケメン度 ★☆☆☆☆ 星1つ
予約3
幼馴染のヨッチャン。
誕生日に鉄製の文鎮をプレゼントに送る豪快な男の子。
陰でずっと助けてくれていた。口数が少ないところがいい。
オシャレ度 ☆☆☆☆☆ 星0つ
珍しく?!オシャレっぽい文章はない。
グルメ度 ★★☆☆☆ 星2つ
予約4
私は本当のオムレツを食べたことがないかもしれない。
・・・自分で作ることも出来ない。
「昔一緒に暮らしていたおばあちゃんが、よくつくってくれたの。卵のホロホロ。表面は固まってるんだけど、お箸を入れるとホロッと崩れて中身が半熟で」
それはすごくよくできたオムレツなんじゃないか。
「で、甘いのよ。ごはんのおかずなんだけど、甘くて、お醤油をかけて食べるの」
感想
個人的には「予約4」が一番のお気に入り。
兄妹想いで友人想いな遥花にとても救われる。
宮下奈都さんらしく「音楽」要素のちょっぴり顔も出します。
ふふ。私も小学生の頃に聞いてました「惑星」なぜかわからないけれど家にあったCD。ポケモンやだんご三兄妹聴きつつ(歌いつつ)、クラシック。
そういえば「太陽のパスタ、豆のスープ」を呼んでからラタトゥイユを作るようになりました。
小説を読んで思い出すこと、知ること、興味が持つことが出来るのはいいですよね。