直木賞受賞小説!テレビドラマ化!町の小さな事件を扱った短編集「鍵のない夢を見る」辻村深月

第147回直木三十五賞受賞作品。

テレビドラマ化作品!

鍵のない夢を見る (文春文庫)

鍵のない夢を見る (文春文庫)

 

 内容紹介

仁志野町の泥棒

隣町から転入してきた律子の母親は泥棒。

大人たちが警察に届けないのはなぜ?

石蕗南地区の放火

放火現場で再会した合コンで出会った冴えない男。

私の気を引くために放火したの?

美弥谷団地の逃亡者

ご近所サイトで知り合った陽次と付き合って2年。

陽次かこれから出会うかもしれない別の彼氏との未来や全部どちらを選ぶ?

芹葉大学の夢と殺人

夢ばかりを追う恋人。

夢以上に大切なものに私はなれないの?

君本家の誘拐

大型ショッピングモールで愛娘が乗っていたベビーカーがなくなった。

片時も目を離すことがなかったのになぜ?

 

 

 

オススメ度 星3つ ★★★

普通が当たり前ではないことに気づかされる小説

恋愛度 星3つ ★★★☆☆

石蕗南地区の放火

主人公は三十六歳の独身女性。

モテそうと学生時代はあんなにも言われた私がお見合い結婚するのは癪。出会いがないのが問題だと思っている。

どうしてだろう。私には、どうしてこんなものしか、こんな男しか寄ってこないのだろう。

何年も前のモテた栄光を今でも引きずり、自分の見栄ばかりを気にしている。私自身にも思い当たる節がある。

美弥谷団地の逃亡者

彼氏を探すには効率がいいご近所サイトで知り合った陽次と付き合う女性が主人公。

本格的に陽次と別れようと思ったのは、暴力のせいでも、母が団地入り口で「美衣出せ、ババァ、ゴラァ」と怒鳴られ、半泣きになって帰って来たからでもない。決意できたのは私に新しい彼氏ができそうだったからだ。

ストーカーされても、暴力をふるわれても好きになった人だからと別れを決意することは出来ない。彼以上に私を好きになってくれる人はいないかもしれない。でも、別に好きな人が出来れば次の恋の為に踏み出すことが出来るのが女性かもしれない。

芹葉大学の夢と殺人

恋人である主人公よりも自分の夢を大切にする学生の恋人。

彼は夢を見ている。叶わないことなんて考えもしない。逃げているという自覚すらなく、自分の夢が実現すると信じて疑わないのだ。最初からきっと。ぶれずに今日までそうだ。

一緒に酔うことが出来る範囲の夢ではなく、バカみたいに大きすぎる夢を持つ恋人。その夢が叶わないかもしれないとは全く疑わない。夢よりも自分を見て欲しいと思う気持ちはわかる。

友情度 星2つ ★★☆☆☆

仁志野町の泥棒

小学生の頃、転入したきた律子とは放課後に家を行き交うくらい仲の良い友達だった。あることがキッカケで疎遠となり、高校生の時に再会するが律子は私の名前を呼ぶことはない。

「君本家の誘拐」二十六歳で結婚してから三年が経っていた良江はずっと子供が欲しかった。自分より遅く結婚した子から「赤ちゃんができました」と報告を聞くと自慢されているような気持ちになっていた。

「すごく心配したよ。千波の式がこれから始まるって時なのに急に泣き出すから」

「あの頃は、私、本当に追い詰められてた」

理彩の顔から、ふっと表情が消えた。しばらくして、苦笑を浮かべ、小さな声で「謝らないんだ」と呟いた。

「え?」

「心配かけてごめんねって謝るかと思った。すぐ、無事に子供できたわけだし」

 念願の子供ができ、自分がまさか自慢するような発言しているとは一ミリも思っていない。結婚ラッシュ、出産ラッシュである私の年代には胸がチクリと痛い短編だった。

家族度 星2つ ★★☆☆☆

君本家の誘拐

育児ノイローゼになる母親の気持ちが少しわかる作品。

私には子供がいないので、実際の大変さはわからない。あくまでの想像でしかないが、子育ては一日中心が休まることはないのではないだろうかと思う。

あなたのためならなんでもする。

最後の言葉がいかにも母親らしくて印象的。5つの短編集の中で一番共感した小説。

 

 

 

感想

女性の気持ちを描くのが本当に上手いなぁ。

自分では普通、当たり前と思っている考え方が普通・当たり前ではないということに気が付かされる。

林真理子さんとの対談もあり。

私は解説や対談を小説を読み始める前や後ではなく、小説読んでいる途中に読んでしまう。最初は単純に自分の好き勝手読んで、途中から解説・対談で触れられていた話題やキーワードを意識して読むのが好き。

辻村さんは西加奈子さん、宮下奈都さん同様に他の作品も読み漁りたい作家の仲間入り決定!

2013年にWOWOWでテレビドラマ化されている。

ちなみにNHKで「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」のドラマ化は白紙撤回になり、中止になっている。

近年は小説(漫画も)がドラマ・映画化されることが増えて、いい作品ももちろんあるけれど、正直ネームバリューだけ利用したとしか思えない作品もある。

「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」の原作者である辻村さんが脚本に納得しなかったというのであれば、きっと放送されても原作が好きだった人が見ればガッカリしたものになっていたのではないかと思う。

girl-book.hatenablog.com

 

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